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#487 村上春樹は「英語帝国主義者」なのか?
ドイツにおける「太陽の西 国境の南」事件の真相
2000/12/29
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村上春樹の凡作???「太陽の西 国境の南」が、ドイツのテレビ番組で問題になったことは、
かなりまえに、チラリと書きましたが。

キャイーーーーン!
このほど、意外なニュースをキャッチしました。

岩波の月刊誌「世界」の1月号に掲載された「村上春樹をめぐる冒険」が、それ。
執筆したのは、ベルリン自由大学教授・ドイツ=日本研究所長のイルメラ・ヒジヤ・キルシュネライトさん。

ドイツのテレビ番組「文学四重奏団」は、4人の文学評論家が、会場にいる聴衆とともに、新刊の文学書を紹介・査定するものだそうです。

そこで、「太陽の西 国境の南」が取り上げられたとき、賛否両論が渦?を巻いたのですが、どういう非難が表明されたかというと・・・・。

「村上の本は、この番組で取り上げる価値などない、文学的なファースト・フード、マクドナルドである」
「表現力を欠いた、覇気のない、つっかえがちなつぶやきにすぎない」


おおおおおっ。たしかにラジカル!
論争は、この番組としてはいつになく過激で、やがて作品をそっちのけにした個人攻撃に発展したそうで。

そういうの、ディベート・インポの日本人の専売特許かと思っていたけれど、ドイツ人も、そうなんだ?
そして、新聞書評のほうは・・・・。

「会話のように流れるだけの底の浅い文体」
「内容は緊密に構成されているが、文章の質は映画の脚本の水準を出ていない」
「比喩や対比は、まるでわざと読者を挑発するかのような安っぽさ」


あのヨーロッパの知性ともいうべき「フランクフルターアルゲマイネ」紙に、そんな批評をされてしまうと、ファンとしても、もう頓死するしかないですよねえ。

しかし、そこで、明るみに出たのは、「太陽の西 国境の南」が、日本語からドイツ語への訳ではなく、英語版からの重訳だったということ。
これを、ある新聞は、「スキャンダルである」と。

そして、イルメラ・ヒジヤ・キルシュネライトさんによると。
「村上春樹の作品の英語版が、アメリカ人の好みに合わせるためなのか、部分的に著しく改編されていることは、すでによく知られた事実である」

えええええええっ! そうだったんですか、春樹さん!

キルシュネライトさんは、続けます。
「作品は短略化され、文章表現は強調され、どちらかといえば過激になり、部分的には完全に書き換えられるが、それらは全て作者の了解の下で行われ、場合によっては、作者自身も書き換えに参加するということだ。」

村上さんは、著書のマーケティングをしているんでしょうか、ねえ。

さて、そういう騒ぎになって、ドイツの出版社は村上春樹と協議し、声明を発表したそうです。

それによると、「日本語からの直接訳が望ましいが、村上は、他の言語でも速やかに出版されることを望んでおり、そのため、英語版を基礎とした他の言語への翻訳を基本的に受け入れる・・・・」

なんか、不用意な弁明みたい・・・・・よくあることですが。

もし、これが村上の意志を正確に伝えているのであれば、
「彼は、日ごろ我々が批判し抵抗している、英語圏の文化的帝国主義を、みずから体現していることになる。これは、文学作品のハリウッド化である。」
「村上春樹にとって、出版の時期のほうが、翻訳の正確さや質よりも重要なのだろうか?」

と、キルシュネライトさんは、批判しています。

ぼくは、「風の歌を聴け」や「羊をめぐる冒険」の英語版をもっていて、部分的に読んでみたことはあるのですが、文体ということでいえば、それらは、まったく違うものでした
(もっとも、この場合、ぼくの英語感覚が問題ではありますね)。

さあ、この村上春樹をめぐる冒険。ドイツで、そして日本で、これからどういう波紋を投げることになるのでしょうか。

日本のマスコミと文壇の反応は・・・・・??????
日本人読者としていえば、彼の作品は、文体の魅力も大きいので、翻訳となると、ややこしいことになりそうです。

あ、ちなみにぼくは、熱烈な春樹ファン・・・・だったので(過去形になっているところが、いやらしいかも?)、読者の信頼を裏切らない解決に着地してくれることを、草葉の陰から祈っています。
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